医療と社会
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委託研究論文
米国におけるCDHC型医療保険
その実態と課題
西村 由美子
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2010 年 20 巻 2 号 p. 123-138

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抄録

米国では1990年代後半以降急速に普及したマネージド・ケア型医療供給体制が21世紀の最初の10年間の市場の主流であった。しかし,マネージド・ケアによる医療費および医療保険料の高騰抑制効果に陰りがみえたことから,CDHC(Consumer Driven/Directed Healthcare)型保険を中心とした「消費者主導のヘルスケア」型医療供給体制が注目されてきている。CDHC型医療保険は,免責額が高く月額保険料の安い医療保険(High Deductible Health Plan : HDHP)と非課税の預金口座(Health Savings Account : HSA)を組み合わせた医療保険で,消費者にとっての自己負担が大きく,それゆえ,自己負担を通じて医療費が明確に自覚されやすい設計の医療保険で,消費者/被保険者を医療サービスの利用に際してコスト・コンシャスな行動へと誘導するものと期待されている。すでにメディケアへの試験的導入がはじまっており,またワーキング・プア層の無保険解消策となるかについても検討が行われている。懸念は低所得層には依然として保険料が高く,預金の非課税効果もないこと。慢性疾患等がある場合には自己負担が高額となり,そのため必要な受診行動まで抑制して健康を悪化させる危険があることであり,課題は消費者がコスト意識の高い消費行動を選択するインセンティブとなるに十分なコストと質に関する情報が提供されること,低所得者が加入可能な保険料が設定できるかである。

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© 2010 公益財団法人 医療科学研究所
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