医療と社会
Online ISSN : 1883-4477
Print ISSN : 0916-9202
ISSN-L : 0916-9202
研究論文
大学における医薬品特許出願と公表のマネジメント
早乙女 周子田中 秀穂
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 20 巻 2 号 p. 155-167

詳細
抄録

本研究では大学発特許出願の改善に関する知見を得ることを目的とし,大学発医薬関連特許文献及びその対応論文を対象に,特許請求の範囲に該当する化合物数(以下「実施例化合物数」又は「対応化合物数」という)を中心に分析を行った。
特許文献中の実施例化合物数の平均は物質特許が10.8,用途特許は4.0であった。また実施例化合物数の分析結果は,(1)単独出願より共同出願の方が実施例化合物数が多い,(2)特許法30条適用の特許文献の方が実施例化合物数が少ない,(3)物質特許において,優先権主張している特許文献の方が,実施例化合物数が多いという結果であった。
対応論文の分析より,(1)物質特許の対応論文の2/3に特許請求の範囲に該当する化合物が追加されていたこと,(2)対応化合物数とインパクトファクター及び被引用数に強い相関はなく,学術的意義と特許の排他性が必ずしもリンクしないことが明らかとなった。
本研究の結果から,第一に実施例化合物数には共同研究の内容が影響することが示唆され,研究者間又は企業と大学の間で学術的意義への配慮をした研究分担の調整等,円滑なコミュニケーションを行うことで信頼関係を構築し,共同研究の内容を充実化させることが重要であると考える。第二に大学における特許出願と公表のマネジメントの改善し,30条適用の回避,優先権主張の活用した実施例の追加により大学における特許出願の質は向上できると考える。

著者関連情報
© 2010 公益財団法人 医療科学研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top