医療と社会
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研究論文
日本における新生児聴覚スクリーニングシステムの評価に関する文献レビュー
大久保 豪甲斐 一郎
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2010 年 20 巻 2 号 p. 169-183

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抄録

目的 先天性両側性聴力障害を早期に発見するため,新生児聴覚スクリーニングが行われている。現時点での新生児聴覚スクリーニングシステムの課題を明らかにすることを目的として,文献レビューを行った。
方法 日本で行われている新生児聴覚スクリーニングを(1)捕捉の効率性,(2)スクリーニングの正確性,(3)早期発見によるアウトカム改善効果という3つの観点から検証した。論文検索には医学中央雑誌,CiNii,PubMedを用いた。
結果 (1)捕捉の効率性:カバー率は48%~100%,精査受検率は75%~100%,追跡率は33%~100%であった。新生児聴覚スクリーニングを受けた群では,そうでない群に比べて初回相談月齢,補聴器使用開始月齢,聴覚学習開始月齢が早くなっていた。(2)スクリーニングの正確性:偽陰性を十分に把握できていない可能性があったため,偽陰性の影響を受けない陽性的中率を算出した。Automated auditory brainstem response(AABR)を2回用いたプログラムで13.0%~29.0%,AABRを3回以上行うプログラムで37.5%~66.7%であった。(3)早期発見によるアウトカム改善効果:早期発見によるアウトカム改善効果を質の高い方法で検証した文献はみつけられなかった。
結論 カバー率,フォローアップ率は高いことが示唆されており,教育にも効率よくつながっていることが示されたが,(1)偽陰性児の把握,(2)他指標,他地域での教育開始時期の検証,(3)コホート研究等を用いた早期発見によるアウトカム改善効果の検証といった課題が明らかになった。

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© 2010 公益財団法人 医療科学研究所
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