本研究の目的は,大阪府泉南地域における二つの公立病院の産婦人科を,それぞれ産科を拠点とする病院(市立泉佐野病院)と婦人科を拠点とする病院(市立貝塚病院)とに役割を分担するという集約化により,分娩ができなくなる市立貝塚病院で過去に分娩を行った女性を対象に,妊婦の施設選択の傾向を探ることである。この集約化実施後にこの地域の妊婦がどの病院を選択するのかを質問し,また仮想的な選択型実験を用いて妊婦が病院を選択する要因を分析した。
主要結果は,全体の43%の人が市立泉佐野病院を選択することがわかった。また核家族や現在専業主婦である人ほど,この病院を選択する傾向があり,彼女らは,医療の充実度や費用の安さを重視した。一方,全体の13%の人が集約化にはかかわらない貝塚市内の私立診療所を選択することがわかった。大家族や現在働いている人ほどこの診療所を選択する傾向があり,彼女らは,移動・待ち時間などの利便性を重視した。