医療と社会
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財団研究論文
患者調査データとDPCデータを用いた入院患者の病院選択行動に影響を与える要因に関する研究
伏見 清秀
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2010 年 20 巻 3 号 p. 211-222

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抄録

限られた医療資源を適切に配置して,医療の質と地域住民のアクセスの確保のバランスのとれた医療提供体制を構築することが求められている。従来は,基本的に二次医療圏で完結する医療が想定されていたが,二次医療圏外の遠方の病院へ入院する患者が相当数いる事が明らかとなり,患者の病院選択に影響を与える要因の分析が必要となっている。本研究では,既存データを活用して,二次医療圏外の病院へ入院する要因を明らかとすることを目的とした。
平成20年度の厚生労働省患者調査病院退院票とDPC調査様式1を結合して,患者の病態,詳細な診療明細,入退院経路,患者住所地の情報を含むデータベースを構築し,データの整合性を確認するとともに,二次医療圏外の病院への入院と関連する要因を分析した。
患者調査退院票とDPC調査様式1の傷病名情報の整合性は一部の疾患を除いて高かった。二次医療圏外の入院では,ケースミックス係数が低く,ケースミックス補正在院日数は短かった。多変量解析により,高齢者(オッズ比0.762),男性(1.067),救急車の利用(1.064),紹介患者(1.158),転院(1.268),感染症(1.486),眼科(1.276),乳腺外科(1.239),循環器科(1.218),患者数の多い病院(1.571),教育病院(2.318)などが二次医療圏外への入院と関連する主な要因であった。
本研究により,患者の病態と病院特性が患者の病院選択に影響を与えることが明らかとなった。専門病院の空間的配置を含む医療連携体制の構築において,考慮する必要があると考えられた。

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© 2010 公益財団法人 医療科学研究所
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