医療と社会
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研究ノート
英国ブレア政権下における医療専門職規制の「近代化」―規制主体の変化を中心に―
石垣 千秋
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2010 年 20 巻 3 号 p. 251-262

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抄録

英国の労働党ブレア政権下では,政策の「近代化」のもとに様々な改革が進められた。医療専門職については,歴史的に「自己規制」によって人材の資質を管理していたが,1990年代後半から2000年代初頭の医療スキャンダルをきっかけに,「クリニカル・ガバナンス」という国民保健サービス(NHS)の近代化の一環として改革が進められた。一連の議論を通じて,国民の安全性を最優先とすること,専門職団体の組織運営において非専門職をより登用すること,議会を通じてより積極的に国民に説明責任を果たすことなど,過去に例をみない改革が進められた。そして,プロフェッショナリズムの下に自己規制によって専門職を統治してきたあり方は,規制機関の多元化という構造の変化と共に,行政府,国民,患者も参加した共有化された規制という主体の変化をみた。
本論は,一連の過程を追跡することにより,「近代化」のもと,医療専門職の規制,国家の関係について示唆を得ることを目的としたものである。英国の中央医療評議会(GMC)はプロフェッショナルの理念型と捉えられる好例であり,日本の議論にも多くの示唆が得られるものである。

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© 2010 公益財団法人 医療科学研究所
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