医療と社会
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特集論文
診療の医学的・経済的側面に対するDPC導入によるマネジメント改善効果の実証的検証
野口 晴子泉田 信行堀口 裕正康永 秀生
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2010 年 20 巻 1 号 p. 35-55

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抄録

背景:DPCは患者を傷病名と診療行為から分類する診断群分類である。これまで得られなかった情報が利用可能となる貴重なデータであり,それによって研究も実施されてきた。他方,DPCデータは病院経営においても有用性が高いと考えられ,効果的な利用は効率的なマネジメントに寄与すると考えられる。しかしながら,この点に関する客観的な検討は行われてこなかった。
目的:DPC病院における経年的な効率性改善を,新規技術などによる貢献部分とDPC病院としての経験年数により示されるマネジメントの貢献部分に分離し,後者が統計的に有意な影響を持つかを実証的に明らかにすること。
方法:胃の悪性腫瘍,虫垂炎,胆のうの疾患,そけいヘルニア,の4疾病について,入院医療提供時における資源使用量の指標として,在院日数,医療費の包括部分,および包括外医療費,を選択し,これらを被説明変数とする方程式をそれぞれ推定する。説明変数にDPC病院としての経験年数の変数を導入し,他の条件を最大限コントロールした上でもDPC経験年数により資源使用量に差異が発生するかを検証した。その際に,術式選択に関する内生性も踏まえた推定を行った。
結果:その他の条件を最大限コントロールした上で,DPC病院としての経験年数が2~3年の病院群を頂点に,それよりもDPC経験年数が短いほど平均在院日数が長く,包括外点数も長い傾向が見られた。有意性の点で違いがあるが,傾向としては対象とした4疾病について共通の傾向であった。
考察:DPC病院としての活動年数が高まると資源配分の効率性が高まる可能性が示唆された。これはDPCデータを用いるだけでなく,実際にDPC病院として活動することを通じたマネジメント改善による効率化余地が存在する可能性を示唆するかも知れない。

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© 2010 公益財団法人 医療科学研究所
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