医療と社会
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特集論文
DPCデータを用いた地域医療資源の分析
伏見 清秀
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2010 年 20 巻 1 号 p. 57-71

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抄録

適切な医療提供体制の構築のためには,地域医療の実態を正確に把握し評価することが必要である。そこで,患者調査データとDPC診断群分類を用いて地域医療の実態を可視化し,地域における医療資源の空間的配分のあり方とその必要量を分析した。患者住所二次医療圏と病院二次医療圏の関連を定量的に可視化すると,病態により二次医療圏境界を越える患者の移動に差があることが明らかとなった。東京都を対象とした体系的な分析では,がん,虚血性心疾患の手術患者が特定の地域に集中する傾向があるのに対して,脳卒中手術患者,長期入院患者では二次医療圏内で完結する傾向が強かった。また,都外の療養病床へ入院する患者が一定数存在することが明らかとなった。全国データを用いた二次医療圏外への入院に関連する要因の多重ロジスティック回帰分析では,循環器,整形外科,がんの手術患者のオッズ比が高い一方,外傷,一般消化器外科,高齢者のオッズ比が低いことが明らかとなった。医療資源必要量の推計として,患者調査より推計した手術患者と在院日数30日以下の患者数を急性期患者として,急性期入院医療の平均在院日数を12.0日と設定すると,我が国の急性期病床の必要数は約46万床で現在の一般病床の半分程度であり,さらに急性期病床の平均在院日数が短縮するとそれに比例して必要数も減少することが明らかとなった。急性期病床と非急性期病床の医師,看護職員数を設定して我が国の医療労働力の充足率の地域差を分析すると,北海道,東北地方での医師の不足と関東,東海地方での看護職員の不足の可能性が示された。また,ICUの全国的な過少状態が明らかとなり,回復期リハビリテーション病棟病床の最大必要数は約11万床であることが明らかとなった。

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© 2010 公益財団法人 医療科学研究所
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