2010 年 20 巻 1 号 p. 87-96
Diagnosis Procedure Combination(DPC)データベースは退院時情報や診療報酬データなどから構成され,診断名・入院時並存症および入院後合併症とそれらのICD-10コード,手術処置名,麻酔時間,輸血量,使用された薬剤・医療材料,在院日数,退院時転帰,費用などの情報が含まれる。データは毎年7月~12月の6箇月間に全国の調査参加病院から収集される。2008年にDPC研究班が収集した855施設・約290万件のデータは,日本の急性期病院の入院患者数全体の約40%に相当する。DPCデータベースを利用して,医療サービスの利用やアクセス,アウトカムや費用などについて経時的に分析可能である。さらにDPCデータベースは臨床疫学研究にも応用可能である。本稿の目的は,(1)DPCデータベースの詳細について解説し,(2)米国の診療報酬データベースと日本のDPCデータベースを比較し,(3)臨床疫学研究における診療報酬データベースの位置づけとDPCデータベースの欠点・利点を明らかにする。さらに,(4)DPCデータベースだけを用いてできる具体的な研究例や手法について紹介し,(5)今後の臨床疫学研究ならびにヘルスサービス・リサーチの発展のためにDPCデータベースが果たす重要な役割について論じる。