医療と社会
Online ISSN : 1883-4477
Print ISSN : 0916-9202
ISSN-L : 0916-9202
研究論文
医薬品企業のCSR活動が医師の医療用医薬品選定に与える影響に関する探索的研究
島田 智明瓜生原 葉子
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 21 巻 2 号 p. 189-203

詳細
抄録

医療用医薬品は,一般消費財と異なり,医師が専門知識を生かし,患者の代わりに購入する製品を決定するという特殊性を帯びている。つまり,医療用医薬品の場合,製品を開発し製造する生産者(医薬品企業)と,製品を使用または消費する消費者(患者)という二者以外に,製品を選定する医師が存在する。では,そのような三者の関係の中で,医薬品企業のCSR(企業の社会的責任)活動が,長期的であれ,短期的であれ,その医薬品企業が販売する医療用医薬品の売上向上につながるかどうか解明したいというのが本研究の動機である。
本研究では,乳がんを専門領域とする医師6名に対して,インタビューによる質的調査を行い,医薬品企業のCSR活動がどの程度医師の医療用医薬品選定に影響を与えるかについて探索的調査を行った。また,どのようなCSR活動が求められているかを明確にするために,乳がん患者および患者支援者6名にもインタビューを行い,医薬品企業のCSR活動に対する考え方について医師と患者・患者支援者の間で比較分析を行った。
主たる分析結果として,医薬品企業のCSR活動が,医療用医薬品の選定に直接的にはほとんど影響を及ぼさないことが示された。専門領域の薬剤では有用性が,専門領域外の薬剤では医薬品企業の信頼性が最重要視され,また,CSR活動が医薬品企業の信頼性を高めることも明らかにされた。さらに,医師と患者・患者支援者の間では,医薬品企業のCSR活動に対する見方が異なることも浮き彫りにされた。

著者関連情報
© 2011 公益財団法人 医療科学研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top