医療と社会
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研究論文
介護予防の効果に関する実証分析
「介護予防事業等の効果に関する総合的評価・分析に関する研究」における傾向スコア調整法を導入した運動器の機能向上プログラムの効果に関する分析
伊藤 和彦大渕 修一辻 一郎
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2011 年 21 巻 3 号 p. 265-281

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抄録

本論では介護予防を目的とした運動器の機能向上プログラムへの継続的な参加の効果について,厚生労働省が実施した介護予防継続的評価・分析(辻 他,2009)の研究成果およびデータを用いて,先行研究では明示的に扱われなかった選択バイアスを調整したうえで,生存時間分析および「差の差」の手法によりその効果を分析した。
はじめにKaplan-Meier法により継続的に参加した高齢者の効果を確認し,次に加速ハザードモデル(AFTモデル)により推計された偏回帰係数を用いて,運動器の機能向上プログラムの参加の有無によって,加速要素(Acceleration Factor)がどのくらい異なるのかを推計した。他の条件を一定として,それぞれリスクが発現する時間が遅くなる効果は,非参加者に比べ特定高齢者で1.6倍,要支援者群で3.1倍と推計された。また,偏回帰係数の検定結果から,特定高齢者群,要支援者群といったカテゴリーによって違いがあるものの,ものわすれテストの点数,既往歴などが介護予防の効果に影響を与えていることを確認した。
さらに,基本チェックリストを用いた「差の差」の手法から,運動器の機能向上プログラムに1年を超えて継続的に参加した高齢者では,そうでない高齢者に比べ,基本チェックリストの点数で測った改善は,特定高齢者で2.0~2.5点程度,要支援者群で0.45~0.5点程度,トータルで0.8点程度,特に要支援者群と全数を用いた推計では有意な改善効果を計量的に確認することができた。

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© 2011 公益財団法人 医療科学研究所
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