医療と社会
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特集論文
インターネットで個人輸入した医薬品の保健衛生(2)
―抗肥満薬による追跡―
木村 和子本間 隆之谷本 剛高尾 知里奥村 順子吉田 直子赤沢 学
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2011 年 21 巻 1 号 p. 55-67

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抄録

インターネットの個人輸入で人気のある肥満治療薬の中でも取扱サイトの多いsibutramine製剤(日本無承認)について,2008年に試買し保健衛生上の問題を追跡した。32サイトから9製品53サンプルを入手した。sibutramine製剤を承認している国では処方せん薬に指定されていたが,処方せん薬であることを伝えたり,処方せんの提示を求めた輸入代行業者はいなかった。添付文書は製造販売国に応じた外国語であり,ポーランド語やトルコ語もあり,さらに添付文書の入っていないものもあった。簡単な日本語説明書が個装箱の外に挿入されているものもあったが,添付文書の記載と異なり,上限量が3倍近くになっていたものもあった。厚生労働省が処方せん薬の個人輸入量の上限とする1カ月投与量を超えているサンプルが多く(79.3%),中には10倍量のものもあった。品質試験に不合格の検体も検出された。さらに関係国で評価されたことのない製品もあった。2010年の欧州,米国での承認取下げ後もインターネットで購入可能だった。
インターネットによる医薬品個人輸入は購買者の責任で行われるが,関係業者の品質マネジメントは貧弱である。消費者はインターネットという新しいツールの出現に対しては,保護の枠組みも発展途上であることを自覚し,生命に直結する医療品の入手は慎重にすべきである。国際的にも医薬品のインターネット販売に対して懸念が高まり,欧州を中心に規制の動きが広がっている。インターネット販売は一国内に留まらないことから,国際協調が必要である。特に,日本からの医薬品注文に対しては特定の近隣諸国/地域から大部分が送付されてくるので,特にこれらの国/地域との協力が重要と考える。

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© 2011 公益財団法人 医療科学研究所
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