2005 年 19 巻 4 号 p. 610-615
症例は61歳男性. 会社検診で胸部異常陰影を指摘され来院. 胸部CTにて左第3胸椎傍椎体領域の後縦隔腫瘍が疑われた. 更に胸部MRIにて椎間孔を通じて傍胸椎椎体領域と脊柱管内との連続性を認め, いわゆるDumbbell型後縦隔腫瘍が疑われた. 手術は, まず腹臥位で第2-4胸椎の椎弓切除を行い, 脊柱管内の腫瘍を全摘出した. 続いて右側臥位で胸腔鏡下に椎間孔~傍胸椎椎体領域の腫瘍を切除した. 病理では神経鞘腫で悪性所見は認めなかった. 術後大きな合併症を認めず, 術後約半年の現在も再発を認めていない.
左傍胸椎椎体領域のDumbbell型神経鞘腫に対して, 椎弓切除と胸腔鏡を併用し, 低侵襲かつ安全に1期的切除に成功した1例であった. 本疾患は, 胸部外科と脳神経外科あるいは整形外科との境界領域の疾患であり, その診断・治療には他科との協力関係が大切であると考えられた.