2006 年 20 巻 5 号 p. 745-750
症例は79歳,女性.住民検診で心陰影に重なる左胸部異常陰影を指摘され,肺腫瘍の疑いで検査を進めたが確定診断が得られなかった.その後の検査で陰影が確認できなくなり,経過観察していたが,胸部CTにて石灰化を伴う結節影が再び確認され,胸腔内を移動していることがわかった.このため,胸腔内結石症と診断し,胸腔鏡下手術にて摘出した.径13mm大の表面平滑,白色の可動性を有する結石であった.同時に径1.5mm大の小結石も認め,摘出した.前者は壊死性変化を伴う脂肪組織,また後者は炭粉と思われる黒色の粒子状物質を核として,いずれもその周囲を線維組織が層状に被包し硝子化したものであり,胸腔内結石症と診断された.胸腔内結石症の本邦報告例は13例のみと非常に稀であり,文献的考察を加えて報告した.