2008 年 22 巻 4 号 p. 709-712
症例は71歳の男性,2006年7月18日,心臓を著明に圧排する左前縦隔の巨大腫瘤性病変の精査のため当科入院.入院翌日に多量の左胸腔内出血,縦隔の著明な右方偏位を認めたため緊急手術を施行した.術後病理組織検査にて悪性孤立性線維性腫瘍Malignant solitary fibrous tumor(SFT)の診断を得た.周囲組織に浸潤を伴う巨大腫瘍を認め肉眼的には完全切除と判断したが,6ヵ月後に局所再発および右肺転移を認め,局所再発巣に対して2007年1月再手術を施行した.浸潤型のSFTは完全切除が困難であり術後の補助化学療法の検討が必要であると考える.SFTに対して確立された抗癌剤治療は未だ存在しておらず,今後,有効な抗癌剤治療の開発が望まれる.