2010 年 24 巻 1 号 p. 096-100
第2肺癌に対する切除術では根治性と肺機能温存の両立という問題がある.症例は57歳の男性,右S3の末梢型扁平上皮癌(長径21mm,pT1N0M0 stage I A)で右上葉切除+リンパ節郭清術施行後6ヵ月の胸部CTで気管支内腔に突出する腫瘍が指摘された.気管支鏡検査で左上下幹分岐部に発生した中心型扁平上皮癌で壁外に及んでいると診断された.第2肺癌と考えられ治療法に苦慮したが,腫瘍の縮小を期待し化学療法(carboplatin+weekly paclitaxel)2コース施行した.15mmの腫瘍は4mmに縮小し,S6区域切除を伴う左上下幹分岐部管状切除で完全切除でき二連銃式気管支形成術で再建した.最終病理はpT2N1M0 stage II Bであったが,現在5年間再発なく通院中である.肺葉切除後の第2肺癌が中心型肺癌であった場合,腫瘍の占拠部位から気管支形成術によって断端陰性となるよう工夫し,さらには化学療法を組み合わせることで根治性を保ちながら肺機能温存が可能な術式を選択すべきである.