2011 年 25 巻 5 号 p. 568-572
症例は76歳男性.咳嗽を主訴に近医を受診し胸部異常影を指摘された.当院を紹介受診し,画像上肺癌が疑われたが,確定診断には至らず手術の方針となった.手術はまず胸腔鏡下に針生検を行ったが診断に至らず,肺部分切除術にて腫瘍を摘出した.1回目の迅速病理診断では炎症と診断されたが肺癌が強く疑われていたため,割面を変更して2回目の診断を行ったところ悪性腫瘍と診断された.胸腔鏡下左肺下葉切除術+ND2aを行い最終的に肺リンパ上皮腫様癌(LELC)と診断された.病理標本では腫瘍周囲にリポイド肺炎像を伴っており,このために1回目の迅速病理診断では診断に至らなかったと考えられた.また,LELCはEpstein Barr virus(EBV)感染との関連が示唆されているが,当症例では腫瘍のEBER-1 in situ hybridizationは陰性であり,EBVの感染は示されなかった.