日本気管食道科学会会報
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特集:気管食道科領域と咳嗽
食道疾患と咳嗽
土橋 邦生
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2004 年 55 巻 5 号 p. 380-386

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抄録

呼吸器疾患と胃食道逆流(GERD)との関連性が注目されている。GERDによる咳嗽や喘鳴の発症機序は,おもに迷走神経反射説とマイクロアスピレーション説の2つがあり,まだ定まってはいない。慢性咳嗽の原因として,欧米ではGERDと後鼻漏と喘息で原因の約86%を占める。また,潜在性GERD患者の唯一の症状が,咳嗽であるという報告もある。喘息患者のGERD合併率は,われわれの内視鏡による検討では,50歳以上の喘息患者で,83.6%にロサンゼルス分類でグレードM以上の所見がみられた。
治療的には,GERDをもつH2ブロッカーの無効な慢性咳嗽患者に,プロトンポンプインヒビター(PPI)を投与により,全例症状の改善がみられたとの報告もある。われわれは,喘息患者にPPIを投与し,ピークフロー値の改善を検討したところ,3例中2例に4~8週後に改善が認められた。
GERDが慢性呼吸器疾患の難治化に関係しているか否かに関しては,はっきりとした結論は出ていない。咳嗽がなかなかおさまらない場合,GERDを念頭に入れ検査・治療を検討することは必要であろう。今後,各種慢性呼吸器疾患とGERDとの関係をさらに明らかとさせる必要がある。

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