Journal of Computer Chemistry, Japan
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研究論文
計算機シミュレーションを用いたRNA結合タンパク質PumilioのRNA結合様式の研究
栗崎 以久男渡邉 博文田中 成典
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2009 年 8 巻 1 号 p. 41-50

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抄録

RNA結合タンパク質(RBP)はRNAの塩基配列や高次構造を特異的に認識、結合し機能を発現する。RBPの一種であるPumilioはC末端側にPufドメインとよばれるRNA結合ドメインをもち、RNAの塩基配列特異的結合 (Figure 1)とRNA特異性という二つの結合特異性を持つことが知られている。Pufドメインは8個のモジュールが並んだ構造をしており (Figure 2)、特定の塩基配列を含むRNAと選択的に結合し複合体を形成することが知られている(Figure 3)。更に塩基置換実験から結合配列中の塩基ごとに複合体安定化への寄与が異なることが示唆されている。本研究では塩基ごとの複合体安定化への寄与を定量的に調べるために計算機シミュレーションを行った。Pufドメイン-RNA複合体の分子動力学計算を行い、分子運動のトラジェクトリーから特異的結合に重要であるとされるPufドメイン-RNA間の水素結合形成の頻度を解析した (Figures 6, 7)。また各アミノ酸、塩基の結合自由エネルギーのエンタルピー項への寄与を計算し、定量的に比較した (Figure 8)。解析の結果、結合配列中の塩基の複合体の安定化への寄与は一律ではないこと、PufドメインではRNA結合界面付近のアミノ酸残基が特に安定化に関与していることを明らかにした。

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© 2009 日本コンピュータ化学会
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