Journal of Computer Chemistry, Japan
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研究論文
結晶計算法によるアスピリン結晶の配座多形解析
小畑 繁昭後藤 仁志
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2008 年 7 巻 4 号 p. 151-164

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抄録

本研究では,アスピリン結晶の配座多形の可能性を調べるため,効率的な配座空間探索が可能な分子計算プログラムCONFLEXに,結晶計算プログラムKESSHOUの機能を導入したCONFLEX/KESSOUを用いて,立体配座解析と配座多形解析を行った.MMFF94を用いてアスピリン単分子の徹底的な配座探索を行ったところ,10種類の配座異性体を見つけた.得られた配座異性体をMM3,およびab initio法(MP2/6-31+G**)で構造最適化を行ったところ,MMFF94構造はMP2構造とよく一致するが,MM3構造は側鎖のねじれ角が異なっていた.また,配座エネルギーについて,MMFF94はMP2よりも高く,MM3は低く評価する傾向にあった.一方,X線結晶構造を結晶格子最適化(LOPT: Lattice Optimization)法で最適化したところ,MM3が極めて高い精度で既知のアスピリン結晶の構造を再現できることがわかった.さらに,20種類の配座多形を解析したところ, X線結晶構造に近い2SSc/Iと2SSc/II,および,その水素結合二量体の水素交換で生じる1SAc/Iと1SAc/IIが安定な結晶構造として評価され,それ以外の配座は10 kcal/mol以上も不安定であると評価された.

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© 2008 日本コンピュータ化学会
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