Journal of Computer Chemistry, Japan
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研究論文
FVMO法による1s型Gauss型関数系のみを用いた分子軌道法の可能性
笹金 光徳
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2010 年 9 巻 1 号 p. 9-14

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抄録

本論文では,森らの開発したFVMO法による分子軌道法のプログラムであるGAMERAにROHFのパートやC2vの対称性を考慮したコードを付け加えた筆者が,1999年に試行したまま未発表になっている水素原子の2p軌道や3d軌道を1s型Gauss型関数系(GTFs)だけで表現することを試みた結果について,報告する.試行の結果,水素原子の2p軌道を記述するために,空間的に反対称化されるよう2つ1s型GTFの組みを作ることによって,同数の2p型GTFによる展開と若干値が高いもののほぼ同等のエネルギーが得られることが分かった(Table 2).また,そのとき最適化された軌道指数はすべての場合において,同数の2p型GTF展開による最適値に十分近くわずかに大きな値であった(Table 3).一方,3d軌道に対しては,現状のプログラムでは正確な解析はできなかったが,やはり1s型GTF4つを1組にすることによって,同様の結果が得られる可能性があることを確かめた.水素原子の2p軌道や3d軌道が1s型GTFだけでうまく表現できるということは,FVMO法を用いれば究極的には1s型GTFだけでも通常の分子の計算が可能であることを示唆している.1s型GTFの基底関数だけを用いた分子軌道プログラムの開発にあたっては,それが可能か,優位性はあるか,問題点はないか,といったことを十分吟味しなくてはならないが,本報告では,このあたりについては深く言及しない.

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© 2010 日本コンピュータ化学会
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