日本大腸肛門病学会雑誌
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総説
排便反射における肛門機能温存と手術
―基礎から臨床へ―
高木 都
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2007 年 60 巻 4 号 p. 191-197

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抄録

統合的機能である排便反射は主として直腸―直腸収縮反射と直腸―内肛門括約筋弛緩反射より引きおこされている. 直腸の適度な加圧伸展は, 伸展部位の収縮反射とそれと同期した内肛門括約筋の弛緩反射をおこす. 両反射は, (1) 骨盤神経を介する仙髄レベルの促進反射, (2) 結腸神経を介する腰髄レベルの抑制反射および (3) 壁内神経系を介する内反射によって制御されている. これらの反射は (4) 求心路を骨盤神経とする橋排便反射中枢を介する腰髄での結腸神経活動の抑制機構で制御されている. 直腸における糞便の貯留には腰髄レベルの抑制反射が関与し, 排便時にはこの抑制反射の脱抑制が鍵となる. これらの反射経路の可塑性は, 外反射経路が損傷されても内反射のみで十分な排便機能が発現することや, 内反射経路が損傷されても, 無傷群と同程度まで回復するという高木らの実験結果によって立証された. その可塑性を利用した肛門機能温存のための新治療法をはじめとしていくつかの可能性を示唆した.

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© 2007 日本大腸肛門病学会

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