日本大腸肛門病学会雑誌
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臨床研究
大腸内視鏡検査における同時性多発腫瘍の頻度
木村 聖路田中 正則工藤 敏啓相沢 弘福田 真作
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2008 年 61 巻 5 号 p. 240-246

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抄録

大腸腫瘍は同時性に併存する多発腫瘍の頻度が高い.今回腺腫,粘膜内癌,浸潤癌の各患者における同時性多発腫瘍の頻度を比較した.内視鏡検査で指摘した腺腫のみの患者476例(腺腫群),一つ以上粘膜内癌のある患者184例(粘膜内癌群),一つ以上浸潤癌のある患者179例(浸潤癌群)における単発腫瘍の頻度,多発腫瘍の場合はその種類と頻度を検討した.腺腫群は単発腺腫254例(53.4%),多発腺腫222例(46.6%)であり,多発腺腫の内訳は2病変144例(30.2%),3病変50例(10.5%),4病変以上28例(5.9%)だった.粘膜内癌群は単発粘膜内癌86例(46.7%),粘膜内癌と腺腫併存73例(39.7%),多発粘膜内癌25例(13.6%)だった.浸潤癌群は単発浸潤癌113例(63.1%),浸潤癌と腺腫併存36例(20.1%),浸潤癌と粘膜内癌併存19例(10.6%),多発浸潤癌11例(6.2%)だった.多発腫瘍の頻度は粘膜内癌のある患者で最も高く,次に腺腫のみの患者であり,浸潤癌のある患者で最も低かった.統計学的には腺腫群と浸潤癌群(p<0.05),粘膜内癌群と浸潤癌群(p<0.005)で有意差を認めた.内視鏡検査における大腸腫瘍は腺腫,粘膜内癌などの粘膜内病変は同時性多発腫瘍を併存しやすく,浸潤癌はむしろ単発腫瘍として指摘されやすい.

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© 2008 日本大腸肛門病学会

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