日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
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特集 主題I:肛門部腫瘍性病変の診断と治療のすべて
VI.痔瘻癌,肛門腺由来癌の診断と治療
杉田 昭小金井 一隆木村 英明山田 恭子二木 了鬼頭 文彦福島 恒男
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キーワード: 痔瘻癌, 診断, 外科治療
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2008 年 61 巻 10 号 p. 994-997

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抄録

痔瘻癌,肛門腺由来の癌は大腸癌全体からみると稀な疾患ではあるが,痔瘻癌は肛門部悪性腫瘍の7∼8%を占める.本症は通常,痔瘻内の肛門腺や瘻管の上皮成分から発生し,10年以上の症状の持続する坐骨直腸窩痔瘻に併発することが多いが,10年以下の症例にも出現することがある.稀ではあるが,口側大腸癌の痔瘻瘻管内へ播種による転移性痔瘻癌もある.痔瘻癌は組織学的に粘液癌が60%と多く,局所への浸潤が高度である.併存する痔瘻の症状があるために早期診断が困難で進行癌で発見されることが多く,stage II以上が症例の80%を超え,予後は不良である.痔瘻癌の予後向上には早期診断が重要で,粘液排出や硬結の増強などの症状の変化に留意し,本症を疑ったら積極的な生検組織診断を行うことが必要である.治療は多臓器合併切除も含めた直腸切断術を原則とし行い,局所の浸潤部を十分切除することが重要である.

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© 2008 日本大腸肛門病学会

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