2009 年 62 巻 6 号 p. 416-419
症例は50歳代の女性で2007年10月に血便と腹痛を主訴に近医を受診し,直腸癌の診断で2008年1月当科入院となった.既往歴で2005年6月に右乳癌で乳房円状部分切除を行い,術後放射線治療とアロマターゼ阻害薬の内服治療をおこなった.下部消化管内視鏡検査で肛門縁より12cmの直腸に亜全周性の2型腫瘍を認めた.生検では低分化腺癌であった.CTでは直腸に造影効果のある腫瘤性病変を認め,子宮とは一部不明瞭で浸潤が疑われた.2008年1月に低位前方切除,単純子宮全摘術,両側付属器切除を行った.病理組織検査で直腸の異所性子宮内膜症を発生母体とした明細胞腺癌と診断された.Ra,2型,4.5×2.5cm,clear cell adenocarcinoma,pSS,int,INF b,ly2,v1,pN2(7/36),pStage IIIbであった.術後に卵巣癌に準じた化学療法(PTX/CBDCA)を婦人科で行っている.異所性子宮内膜症を発生母体とする直腸原発明細胞腺癌の1例を経験した.