2009 年 62 巻 2 号 p. 82-88
目的: 近年大腸癌罹患率の増加と診断治療成績の向上により他臓器重複癌症例も増加している.そのため臨床病理学的特徴とその意義について検討した.対象: 1982年から2002年までの21年間に当科にて手術施行された2,359例.結果: 手術症例のうち重複癌は384例(16.3%)であり,同時性106例(27.6%),異時性278例(72.4%)であり,異時性多発大腸癌症例の39.2%,特に男性は48.1%に認めていた.重複臓器は,男性は胃,肺,前立腺,女性は胃,乳腺,肺の順であり,当県の癌登録臓器に一致していた.重複癌例と非重複癌例で予後に差は認められないが,重複癌例では重複癌死が多く,大腸癌先行例では死因の約75%に認めた.結語: 他臓器重複大腸癌症例は重複癌により予後の悪化を認めるため,画一的でなく地域性を重視したフォローや検診を施行すべきであり,それらの早期発見で予後の改善する可能性があると思われた.