2010 年 63 巻 3 号 p. 173-178
症例は59歳,女性.右下肢痛を主訴に近医を受診し,MRIで右坐骨腫瘤と直腸腫瘍が指摘された.当科を紹介受診し,進行下部直腸癌,右坐骨転移と診断した.右坐骨転移以外に遠隔転移は認められなかった.5FuとCDDPの全身化学療法に加え,坐骨転移も含めた全骨盤へ総量40Gyの放射線治療をおこなったが右下肢痛は改善されないため,疼痛緩和の手段として腹会陰式直腸切断術と右骨盤半裁術を施行した.術後に肝転移が出現したが化学療法後に切除し,その後再発なく長期生存を得ている.消化器癌の骨転移は他臓器転移を合併していることが多く,切除の対象となることは極めてまれである.しかし,全身化学療法の有効性が高まっている現在,自験例では長期生存が得られており,時には転移巣の切除も考慮しつつ集学的治療を模索してゆく意義があると考える.