日本大腸肛門病学会雑誌
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症例報告
化学療法中にTrousseau症候群を呈した大腸癌肝転移の1例
門馬 智之仕垣 幸太郎小野澤 寿志石亀 輝英菅野 英和左雨 元樹中村 泉大木 進司竹之下 誠一
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2012 年 65 巻 3 号 p. 150-154

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抄録

Trousseau症候群は悪性腫瘍に伴う血液凝固異常により,脳卒中症状を生じる病態として知られている.今回われわれは,化学療法施行中に,Trousseau症候群を呈した大腸癌肝転移症例を経験した.症例は 54歳女性.2008年11月より上行結腸癌(SE,N2,P0,H2,Stage IV)に対し,化学療法を施行していた.2009年2月に意識障害あり,頭部MRIにてTrousseau症候群に特徴的な異なる脳血管支配領域に多発する急性期脳梗塞像を認め,血液検査で凝固能亢進を認めた.ヘパリンによる抗凝固療法と,CPT-11の化学療法を併用し行ったが,全身状態の悪化により,3ヵ月後に死亡した.現在では,悪性腫瘍患者の90%以上が何らかの血液凝固亢進状態を示し,50%以上に血栓塞栓症を認めるともいわれている.大腸癌に対する化学療法の進歩により長期にわたり坦癌状態で経過みることもあり,今後,Trousseau症候群に遭遇する機会の増加が想定される.早期に診断し,ヘパリンによる抗凝固療法と,原疾患への加療を併施するよう努めることが重要である.

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© 2012 日本大腸肛門病学会

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