乳頭腫が中耳に発生することはまれであるが, 両側発生例はさらにまれで, 著者が渉猟し得た限りでは過去に一例の報告しかない. 本例は52歳, 女性で中耳・鼻副鼻腔に発生した内反性乳頭腫から感染が進展し, 急性乳様突起炎からの硬膜外膿瘍による小脳症状を来した. 当初, 乳頭腫は右中耳・右鼻副鼻腔にあり, 経過中に左中耳にも発生した. 過去の報告を集計したところ, 本例のような多発性の中耳乳頭腫は15例あり, 中耳単独発生の乳頭腫と比較して再発率や癌に関連する症例の割合が明らかに高く, 厳重な経過観察を要するものと考えられた.