腸内細菌学雑誌
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哺乳期ラットのバクテリアルトランスロケーション:腹腔滲出性多形核白血球の貪食作用に及ぼす影響
矢島 昌子矢島 高二桑田 有
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2006 年 20 巻 1 号 p. 19-24

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抄録

ラットの乳仔では,健常な母乳哺育仔において哺乳期間を通じて腸間膜リンパ節までのバクテリアルトランスロケーション(BT)が起こっているが,肝臓等全身性のBTは全く検出されなかった.しかし,人工乳哺育を行う目的で3日齢のラット乳仔に,胃内カニューレを装着すると,カニューレ装着術により,人為的に全身性のBTが起こった.その後カテーテルを装着のまま人工乳で哺育された(AR)仔では,カテーテルを抜去し母乳哺育された(Sham)仔に比べて,肝臓へのBTが長期に持続した.ラットのAR仔は健常な母乳哺育(MR)仔に比べて,ほ乳期を通して糞便内の大腸菌数レベルが有意に高く,小腸や結腸への付着菌数が高いこと,肝臓へのBTの頻度は大腸菌群が最も高いことを既に報告した.そこで,AR仔の腹腔滲出性白血球(PMNL)によるFluorescein isothiocyanate(FITC)標識ラテックスビーズ貪食活性を測定し,MR仔の場合と比較した.その結果,AR仔では,MR仔に比べて,PMNLの貪食活性は約60%と低くなっていた.次に健常なMR仔におけるPMNLの貪食活性に及ぼす腹腔内リポ多糖(LPS)投与の影響を調べた.その結果,LPSの投与は経時的に,また濃度依存的に,PMNLの貪食速度を低下させた.これらの結果から,胃内カニューレを装着させてARを行った乳仔でBTが長期に持続することの背景の一つとして,病原菌排除に役立つPMNLの貪食活性が,BTにより生体内に侵入したLPSによって低下することが考えられた.

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© 2006 (公財)日本ビフィズス菌センター
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