日本救急医学会雑誌
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症例報告
窒息による心肺停止で搬入された再発性多発性軟骨炎の1例
山口 充間藤 卓福島 憲治中田 一之上原 淳内野 滋彦大河原 健人
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2008 年 19 巻 10 号 p. 972-978

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抄録

窒息による心肺停止で搬入された再発性多発性軟骨炎の一症例を報告する。患者は63歳の女性。 3 年前より目の腫脹,耳痛,呼吸苦などが出現し,各々の診療科を受診していたが,総合的な診療を受けることなく局所に対する対症療法が行われていた。呼吸苦は徐々に悪化し,意識消失しているところを発見された。救急隊到着時は既に心肺停止状態であった。来院後の心肺蘇生術によって心拍再開したが,蘇生後の全身状態は不良で入院後第 5 病日に永眠した。来院時に耳介変形,鞍鼻が認められており,胸部X線像では気管狭窄が認められた。耳介軟骨部分の病理診断では,軟骨組織は認められず,軟骨基質が認められるのみで,線維結合組織に置き換わっており,多数の炎症性細胞の浸潤を認めた。以上より再発性多発性軟骨炎と診断した。再発性多発性軟骨炎は,全身の軟骨を主病変とする多臓器障害性の疾患であるが,比較的稀な疾患であり,専門家以外にはあまりその病態は知られていない。診断は,耳介軟骨炎や鼻軟骨炎のように外表面に特徴的な所見が認められ,知っていれば診断は容易である。また治療もステロイド治療が中心であり,早期に治療が行われれば反応もよい。しかし,頻度が稀なために見逃されることも多い。その間に軟骨炎の重篤な合併症としての気道狭窄を引き起こし,時に今回のように致命的となる。再発性多発性軟骨炎による心肺停止症例を経験した。比較的稀な疾患であり,治療は容易であるが,時に本例のように気管狭窄を伴い致命的な経過を辿るので注意が必要である。

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© 2008 日本救急医学会
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