日本救急医学会雑誌
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症例報告
気管支痙攣を発症しPCPS導入に至った胸部外傷の1例
細見 早苗伊藤 賀敏小林 誠人甲斐 達朗
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2010 年 21 巻 1 号 p. 35-41

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抄録

治療抵抗性の気管支痙攣に対し,迅速な体外循環補助の導入により救命しえた胸部外傷の1例を経験したので報告する。患者は喘息,アレルギー等の既往のない46歳の女性。歩行中に乗用車にはねられ,びまん性軸索損傷および右気胸を受傷した。気道閉塞の懸念と意識レベルの低下(Glasgow Coma Scale E1V1M5)があったので,気管挿管の上,右胸腔ドレナージを施行しICU管理とした。経過は問題なく,第2病日に胸腔ドレーンを水封とした。第3病日,気胸の悪化を認めたため胸腔ドレーンの持続吸引を再開したが,その数時間後に突然換気不良となった。身体所見,諸検査より気管支痙攣を考え,ステロイド等の治療を行ったが一回換気量100ml以下と改善しなかった。呼吸不全の状態に対し,呼吸補助の目的に体外式肺補助(extracorporeal lung assist; ECLA)を導入した。その1時間半後,血圧・脈拍ともに低下したため経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support; PCPS)の導入に至った。PCPS導入後,呼吸・循環ともに安定した。発症約8時間後には気管支痙攣は軽快し,翌日にはPCPSを離脱しえた。その後,良好に経過し,第30病日に転院となった。気管支痙攣を来したのは,鎮静が不十分であったことに,気胸の再ドレナージという肺胞・気管支への刺激が加わったことが原因と考えられた。気管支痙攣に対して,PCPSは有効な補助療法であると考えられた。

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© 2010 日本救急医学会
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