日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
左総腸骨静脈閉塞症に対しリング付き ePTFE グラフトにより大腿-腸骨静脈交叉バイパス術を施行した1例
飯田 泰功山本 和男三島 健人上原 彰史榊原 賢士杉本 努吉井 新平春谷 重孝
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2008 年 37 巻 3 号 p. 177-180

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抄録

症例は71歳,男性.2007年3月1日突然の左下肢腫脹が,3月5日から歩行時痛が出現し,8日に近医を受診したが,塗り薬により経過観察されていた.その後,下肢の感覚鈍麻も出現したため,15日当院整形外科受診,静脈エコーで左総腸骨静脈の閉塞を認めたため,当科入院となった.造影CTでiliac compression syndromeと診断し,同日一時的IVCフィルター挿入,ヘパリン,ウロキナーゼ持続静注とワーファリン内服を開始した.1週間後,大腿・下腿周囲径は改善したが,熱感,歩行時痛は改善せず,静脈エコーで左総腸骨静脈内に血栓が残存していたため,3月26日(発症後26日)に10mmのリング付きexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)グラフトにより左総大腿静脈-右外腸骨静脈バイパス術を施行した.術後,下肢周囲径はさらに改善,静脈造影,CTでグラフト開存を確認し,術後11日目に退院した.術後3カ月のエコーでグラフト開存を確認した.今後も,注意深い観察が必要であるが,慢性期に入り症状の改善を得がたい症例に対してバイパス術は治療法の選択肢の一つになると考え,文献的考察を加え報告する.

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