日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
PAS·Port を用いて左開胸アプローチによる再冠動脈バイパス術 (re-CABG) を施行した1例
望月 慎吾中尾 達也繁本 憲文川上 恭司
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2008 年 37 巻 3 号 p. 205-208

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抄録

左冠動脈回旋枝 (LCx) に新たな狭搾をきたした再発狭心症に対して,左開胸下に PAS·Port (Cardica社,Redwood City, CA) を用いて下行大動脈に中枢側吻合し,グラフト経路として肺門上を選択した心拍動下冠動脈バイパス術 (OPCAB) を経験したので報告する.症例は60歳,男性.1999年8月11日に当科で OPCAB (左内胸動脈(LITA)-前下行枝(LAD),左橈骨動脈(RA)-右後下行枝(4PD))を施行した.2006年8月15日に再び胸痛を認めたため8月24日に冠動脈造影検査 (CAG) を施行したところ,LCx#11~13に高度の石灰化を伴う90%狭窄を認めたため手術目的で当科紹介となった.胸骨正中切開ではグラフトを損傷する可能性が強く,左開胸下に大伏在静脈 (SVG) を用いて下行大動脈から第1鈍縁枝(OM1),第2鈍縁枝 (OM2) に対して sequential に再冠動脈バイパス術 (re-CABG) を施行した.下行大動脈は石灰化が強く遮断困難であったため, PAS·Port を使用して下行大動脈に SVG を中枢側吻合し,肺門上を通過させ末梢側を吻合した.術後経過は良好で術後22病日に退院した.回旋枝領域への re-CABG を施行する場合には左開胸アプローチが有用であるが,そのさい graft inflow source およびグラフト経路を十分に考慮する必要がある.

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