日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
弁膜症手術症例における口腔内病変の罹患率と対策
中村 喜次田鎖 治斎藤 健一小山田 志瑞本田 賢太朗本間 信之宮本 亮三中野 清治
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2008 年 37 巻 4 号 p. 213-216

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抄録

弁膜症患者の術前における口腔内病変の罹患率は不明である.今回,弁膜症手術患者の口腔内病変の罹患率について調査,検討した.また菌血症をおこしうる病変があった場合,抜歯を術前に行った.抜歯が術後在院日数に与える影響についても検討した.2003年5月から2007年1月までに施行した弁膜症手術患者177例中,歯科受診した137例を対象とした.菌血症を呈する可能性のある化膿性歯周炎,根尖性歯周炎を認めた場合,抜歯の適応とした.菌血症となりうる口腔内病変を有し抜歯が必要であった患者は82例(59.9%)であった.また軽度のう歯のため抜歯は必要なかったものの簡単な充填処置が必要であった症例が6例(4.4%)であった.要抜歯患者の平均抜歯本数は1.9本(1~10本)であった.抜歯による合併症を認めず,要抜歯患者群と抜歯不要患者群の術後在院日数はそれぞれ15±11日,14±5日であり有意差はなかった.平均観察期間30カ月中,術後,感染性心内膜炎を発症した症例はなかった.弁膜症手術症例の口腔内病変罹患率は高く,その多くは菌血症の原因となりうる病態であった.それら口腔内病変を有する患者に対し弁膜症手術前に安全に抜歯が可能であり,術後経過を遷延させることはなく良好な結果を得た.

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