2008 年 37 巻 4 号 p. 240-243
症例は32歳女性.中学時代から心電図異常を指摘され軽い運動制限をしていた.2007年7月突然心室細動となって意識消失し,近医へ救急搬送された.緊急冠動脈造影にて左冠動脈は肺動脈後方の right facing sinus より起始しており,Bland-White-Garland(BWG)症候群と診断された.手術は最も生理的で予後が期待できる左冠動脈-大動脈直接吻合術を選択した.心筋保護液は初回のみ順行性に,以後は冠静脈洞から逆行性に投与し心停止を維持した.左冠動脈主幹部(LMT)を剥離遊離する際に内膜亀裂を認めた.視野確保のため,超低体温循環停止とし,大伏在静脈パッチで損傷部を修復し手術を完遂した.BWG症候群に対する手術では体循環からの側副血行から冠動脈に血流が持続するため,心筋保護および視野の確保に工夫が必要である.