日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
悪性関節リウマチ症例に対する冠動脈バイパス術の1例
長 知樹井元 清隆鈴木 伸一内田 敬二柳 浩正小林 健介伊達 康一郎郷田 素彦益田 宗孝
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2008 年 37 巻 5 号 p. 259-263

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抄録

症例は39歳女性.32歳時に悪性関節リウマチを指摘され,ステロイド内服で治療されていた.突然の前胸部痛で当センターを受診した.冠動脈造影検査で#5:99%.急性心筋梗塞,肺水腫の診断で緊急 off pump CABG1 枝(左内胸動脈-左前下行枝)を施行した.1年3カ月後に狭心症,心不全再発し入院した.冠動脈造影検査では LITA は開存していたが,#5:100%,#11:99%,#1:90%と血管炎と考えられる病変の進行を認めた.再手術で on pump CABG2 枝(右内胸動脈-#2,胃大網動脈-左回旋枝後側壁枝)を施行した.現在外来経過観察中である.関節リウマチを合併した冠動脈バイパス症例の報告は少ない.しかし,関節リウマチ患者の死亡原因として冠動脈病変が最も多いと報告されている.本症例が若年でありながら短期間に急速に冠動脈血管病変が進行したのは,初回手術後炎症反応のコントロールに難渋したことだけでなく,ステロイド投与自体による血管内皮細胞の変化も考慮する必要があると思われた.

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