日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
大動脈基部置換術後19年目の人工血管-人工血管吻合部仮性瘤に対する1手術例
椛沢 政司高原 善治茂木 健司畠山 正治
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2008 年 37 巻 5 号 p. 268-271

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抄録

大動脈基部置換術後19年目の人工血管-人工血管吻合部仮性瘤に対する1手術例を経験したので報告する.症例は57歳女性.1988年急性 A 型大動脈解離のため他院にて大動脈基部および上行大動脈置換術( Piehler 法再建)を施行,他院外来にてフォローされていたが,2001年より CT にて人工血管周囲に血腫様低濃度域を認め,2006年11月には60mm大に拡大,遠位弓部大動脈の解離部も50mm大に拡大してきたため当院を紹介された. CT・血管造影等の精査にて大動脈基部仮性瘤,III度の僧帽弁閉鎖不全症 (MR) と診断され,2007年4月に上行弓部大動脈人工血管置換術+僧帽弁置換術 (MVR) を施行した.前回手術時の人工血管-人工血管の吻合部からの微小出血を2カ所から認め,これによる仮性瘤であった.術後長期を経て吻合部からの微小出血をきたす原因として,人工血管の劣化または縫合糸の劣化が考えられたが,本症例では縫合糸の緩みが認められ,縫合糸劣化が疑われた.術式に工夫を加えることで,安全に手術を施行することができた.

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