日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
二次性動脈腸管瘻の2治験例
石川 和徳緑川 博文菅野 恵小野 隆志森島 重弘
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2008 年 37 巻 5 号 p. 298-301

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抄録

二次性動脈腸管瘻の2手術例を報告する.症例1は80歳,男性.腹部大動脈瘤 (AAA) に対する Y 型人工血管置換術から22年経過.下血の精査で施行した造影 CT および血管造影にて人工血管右脚と総腸骨動脈との吻合部に嚢状瘤および血腫の形成を認め二次性動脈腸管瘻と診断した.左大腿-右大腿動脈交叉バイパス作製後に右後腹膜到達法により人工血管を露出し,脚分岐直後で断端閉鎖した.右内・外腸骨動脈を結紮後に穿通部の回腸を吻合部瘤と一塊に切除し,腸管は端々吻合で再建した.感染徴候無く術後19日目に退院となった.症例2は77歳,男性. AAA に対する Y 型人工血管置換術から9年経過.吐血に対する上部内視鏡検査で二次性動脈腸管瘻を疑われ,造影 CT で中枢側吻合部の動脈瘤所見から本症と診断した.右腋窩—大腿動脈バイパス術後に経腹膜法で中枢側吻合部に到達し,十二指腸水平脚の穿通部と共に人工血管を可及的に摘除した.中枢側は大動脈で,末梢側は人工血管の脚分岐部直上で断端閉鎖し大網を充填した.十二指腸は欠損部を直接縫合閉鎖した.感染徴候無く術後26日目に退院した.致死率の高い本症であるが,迅速で的確な診断と治療により良好な結果を得た.

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