2008 年 37 巻 6 号 p. 345-348
症例は58歳,男性.慢性解離性大動脈瘤に対して胸部下行人工血管置換術が施行された6年後,末梢側吻合部の瘤拡大を認め手術目的に入院となった.前回の手術では,末梢側吻合部の真腔が狭小化しており真腔への吻合が困難であったため,intimal flapを切除し偽腔にも開窓する二連重(double-barreled)吻合が行われていた.治療は前回の手術後MRSA膿胸を併発していたため,胸腔内の癒着により左開胸が困難と判断し,開窓部を閉鎖するステントグラフト内挿術を施行した.術後神経学的合併症も見られず,術後18カ月目のCTにて最大径58mmであった瘤が38mmにまで縮小した.慢性解離性大動脈瘤において手術によって切除された内膜欠損部を慢性期にステントグラフトによって閉鎖し,瘤の縮小が得られた症例を報告した.