日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
冠状動脈バイパス術に左内胸動脈(LITA)末梢側分枝を有効利用した 2 症例
中川 博文中尾 達也繁本 憲文
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2008 年 37 巻 6 号 p. 368-371

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抄録

長期開存性が期待できる内胸動脈(ITA)を多枝バイパスに対して使用する際,グラフトアレンジが必要とされる.今回,LITA末梢側分枝を有効利用するため,LITAの末梢枝を用いたLITA Y-composite graftとnatural Y-graftによる前壁領域再建を施行した2症例を報告する.症例1,56歳男性.#6 just calc 90% diffuse,#9 just 90%に対してoff pump下に2枝バイパスを施行した.左前下行枝(LAD)と第1対角枝(D1)吻合部の分枝角度および血流競合を考慮してLITA中枢側を#7に,LITA末梢側分枝を#9に吻合したY-composite graftingを施行した.症例2,78歳男性.#4AV 90%,#7 90%,#9 75%,#12 90%,#14 75%に対してon pump,心停止下に6枝バイパスを施行した.LAD領域の糖尿病性の枯れ枝状冠動脈に対して,冠動脈径,LADとD1の分枝角度,灌流域の血液需要を考慮してLITA自然分枝を用いたLITA分枝と#8および#9末梢部へのnatural Y-graftingによる前壁血行再建を施行した.また,大伏在静脈(SVG)を用いた#9中枢部-#12-#14-#4AVのsequential graftingも施行した.2症例とも術後早期および遠隔期グラフト開存率は100%であった.LITA末梢側分枝を有効利用したY-graft再建法は,症例によっては有効な選択肢の一つになると考えられた.

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