日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
失神を契機に発見された左冠動脈主幹部低形成に対し冠動脈バイパス術を施行した1例
熊谷 和也金 一上部 一彦大沢 暁小山 耕太郎高橋 信佐藤 陽子岡林 均
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2008 年 37 巻 1 号 p. 36-39

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抄録

症例は13歳,女児.くり返す運動後の失神を認めたため,当センターに紹介された.経胸壁心エコー検査で心機能に異常は認めなかったものの,24時間ホルター心電図で心拍の上昇に伴う ST 低下,およびトレッドミル負荷心筋シンチで同様の ST 低下を伴う心電図異常とともに左室前壁に虚血所見を認めた.冠動脈 CT 検査では左冠動脈主幹部低形成が認められたため,心筋虚血に伴う心原性失神と診断された.手術は非体外循環下で左内胸動脈-前下行枝の1枝バイパスを施行した.術後のストレスシンチでは心電図異常および心筋虚血の所見も認められず,冠動脈 CT 検査においてもグラフトの開存は良好であった.現在運動後の失神発作などは全く認められていない.学童期に失神を契機に発見された左冠動脈主幹部低形成の1手術例を報告した.冠動脈の形態異常に伴う心原性失神は非常に希であるが,放置すれば突然死などの原因となり,失神の鑑別診断として注意しておくべきである.また本症例のように,虚血が関与するくり返す失神に関しては積極的な冠動脈バイパス術が考慮されるべきであると考えられた.

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