2008 年 37 巻 1 号 p. 44-47
先天性食道気管支瘻に合併した感染性胸部大動脈仮性瘤の1例を経験したので報告する.症例は74歳の男性.6年前より慢性腎不全に対して血液透析を行っていた.背部痛を訴えて来院し,胸部 CT により感染性胸部大動脈仮性瘤と診断された.大動脈の広範な石灰化を有する透析患者に対するグラフト置換術のリスクと感染の存在下におけるステントグラフト使用のリスクの双方を考慮した結果,ステントグラフト内挿術を施行した.術後に遷延する肺炎,飲水時の咳,嚥下困難をみとめた.上部消化管内視鏡,気管支鏡により食道気管支瘻と診断された.食道気管支瘻に対する根治術を予定していたが,術後64日目胸部大動脈仮性瘤の再出血により死亡した.病理組織検査の結果,先天性食道気管支瘻と診断した.