日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
僧帽弁形成術のための視野確保の工夫
——左房拡大がない症例でも1本の鉤で良好な視野を得るために——
飯田 浩司砂澤 徹石田 敬一土居 厚夫須藤 義夫浮田 英生
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2009 年 38 巻 2 号 p. 100-102

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抄録

1本の鉤で僧帽弁形成術に必要な視野を得る工夫を報告する.胸骨正中切開で心膜を切開し右側心膜を引き上げて固定する.心膜切開の上方を大動脈右側からSVC右側に沿って右上肺静脈まで延長する.IVCから右下肺静脈までの心膜を切開する.SVC,IVCをテーピングし患者左方に引いて固定する.右側に引いた心膜と左側に引いたSVC,IVCの間に露出した右側左房を切開し開胸器に固定可能な鉤(Valve Platform Atrial Rake)を1本使用すると良好な視野が得られる.連続した38例の僧帽弁閉鎖不全症において視野の確保に難渋した症例はなくMVPが可能で,手術死亡,出血再開胸,不整脈の遷延,横隔神経麻痺,縦隔炎,再手術は認めなかった.MVP単独を行った18例における手術時間は212±32分,人工心肺時間120±22分,大動脈遮断時間88±18分であった.左房拡大がない症例にも有効であり,高度な技術や高価な器具を要さず,普遍的に施行可能な僧帽弁手術の視野確保法であると考える.

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