日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
心臓血管手術後の頻脈性不整脈に対する短時間作用型β1 遮断薬の有用性
鈴木 晴郎石川 進門脇 晋中村 圭介阿部 馨子川崎 暁生禰屋 和雄上田 惠介
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2009 年 38 巻 3 号 p. 175-178

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抄録

心臓手術後急性期における短時間作用型β1 遮断薬・塩酸ランジオロール(オノアクト®)の有効性と安全な投与方法を検討した.心臓大血管手術後の成人10症例を対象とした.年齢は平均66(53~81)歳で男女比は9対1であった.主疾患は弁膜症7例,虚血性心疾患,胸部大動脈瘤,大動脈解離が各1例であった.頻脈の内訳は上室性(心房細粗動,上室性頻拍)が6例,心室性(心室性頻拍)が4例であった.頻脈性不整脈に対して,上室性ではIa,Ic群抗不整脈薬を,心室性ではIb群抗不整脈薬を第1選択として投与し,無効例でオノアクトを投与した.オノアクトの投与は初期負荷投与は行わず,静脈内少量持続投与とした.投与量は,導入量が平均0.018 mg/kg/分で,効果発現後は平均0.01 mg/kg/分で維持した.臨床効果:10例中9例で有効であった.上室性では,心房細動の4例中3例が洞調律に復帰し,1例で心房細動が持続したが心拍数の安定が得られた.心房粗動の1例では効果が不十分であり他剤に変更した.上室性頻拍の1例では心拍数の安定を得た.心室性では4例全てで頻拍症(VT)が消失した.血行動態:オノアクト投与により脈拍は140±42/分から95±21/分へと有意に(p<0.05)低下した.収縮期血圧は,投与前の118±24 mmHgから106±21 mmHgへと軽度低下したが有意差はなかった.心係数(CI)は投与前の2.4±0.5 l/min/m2 より2.7±0.6 min/m2 へと有意に(p<0.05)上昇した.拍出係数(SI)は17±7 ml/回/m2 より27±4 ml/回/m2 へと有意に(p<0.05)増加した.副作用:血圧低下,徐脈,気管支喘息発作はなかった.血液生化学検査では異常を認めなかった.短時間作用型β遮断薬(オノアクト®)は心大血管手術後の頻脈性不整脈に対して有用であった.少量持続投与法は心血行動態には大きな影響が無く,開心術後でも安全に用い得る.

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