症例は63歳の男性.急性B型大動脈解離発症4年後に,胸腹部大動脈瘤に対して,人工血管を用いてパッチ形成術および腹腔動脈再建術を施行した.その8年後に吻合部仮性動脈瘤を認め再手術となった.左第8肋間開胸にて動脈瘤に到達し左大腿動静脈より送脱血管を挿入し下半身部分体外循環下に手術を行った,中枢側はTh8レベルで,末梢側は上腸間膜動脈直上で遮断し動脈瘤を切開した.中枢側吻合部が離解し仮性動脈瘤を形成していた.パッチをすべて除去し人工血管置換術を施行した.肋間動脈は2対人工血管間置法にて再建し,腹腔動脈も同様に再建した.術後経過良好で対麻痺も認めず,術後12日目に軽快退院となった.本例は初回手術時にパッチ形成術を選択し対麻痺を回避し得た症例であるが,遠隔期に吻合部瘤を合併した.このような合併症を考慮すると,可能な限り脊髄虚血予防を行った上で人工血管置換術を選択するのが妥当と考える.