2009 年 38 巻 4 号 p. 293-296
症例は62歳男性.感染性心内膜炎を発症.抗菌剤で感染徴候は改善したが大動脈弁および僧帽弁での重度の逆流を認め手術適応となった.術前CT検査で無冠尖直上の大動脈後壁に径約20 mm大の仮性瘤を認め,感染性心内膜炎に合併した上行大動脈仮性瘤の診断で手術を行った.大動脈弁は無冠尖弁尖に感染を認めたが,弁輪には明らかな変化を認めなかった.瘤は大動脈内壁が陥没したような形状で,同部の外側面には血液の浸出を認めたが,無冠尖弁尖と動脈瘤間の大動脈壁には感染の連続性はなかった.Composite graftを用いたベントール手術および僧帽弁形成術を行い,術後一過性に右冠動脈の閉塞を生じたものの概ね良好に経過した.病理組織検査では無冠尖に著明な炎症細胞浸潤があり,動脈瘤は内膜,中膜を欠いた仮性動脈瘤であった.感染性心内膜炎の診療に際しては,全身のあらゆる血管に動脈瘤形成の可能性があることを念頭におく必要があると考えられた.