日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
三尖弁の感染性心内膜炎に対して自己心膜を用いて三尖弁形成術を行った1例
加藤 秀之吉田 英生久持 邦和柚木 継二毛利 亮徳永 宜之鈴木 登士彦大庭 治
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2009 年 38 巻 5 号 p. 340-343

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抄録

三尖弁の感染性心内膜炎に対して自己心膜を用いて三尖弁形成術を行い,良好な経過を得た1例を報告する.症例は27歳女性.39℃の発熱と咳嗽で発症した.炎症反応の高値と肺野の多発結節陰影を指摘され,敗血症性肺炎の診断で緊急入院となった.心エコー検査で三尖弁に疣贅と三尖弁逆流III度を認め,感染性心内膜炎と診断された.抗生剤治療を行うも感染のコントロールが困難であったため手術となった.三尖弁前尖の20 mm大の疣贅と後尖の5 mm大の疣贅を付着した弁腹とともに切除し,前尖は残存弁尖をslidingさせ,生じた欠損部に無処理の自己心膜を補填する形で弁形成を行った.術後に抗血小板剤や抗凝固薬の内服を必要とせず,感染の再燃もなく良好な経過であった.術後心エコー検査でTRはI~II度で1年の観察期間でも変化はなかった.同症例では遠隔期のTRの経過観察を要するが,感染の強い症例において異物を用いない形成術として有効な手術手技の1つと考えられた.

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