日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
Knitted Dacron 人工血管断裂による右鼠径部仮性動脈瘤の1例
畠山 正治小野 裕逸板谷 博幸
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2009 年 38 巻 6 号 p. 372-375

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抄録

症例は75歳,男性.1988年に閉塞性動脈硬化症の診断に対して,Y型Cooley double velour knitted Dacronグラフトを用いて腹部大動脈-両側大腿動脈バイパス術を受けた.2008年に左鼠径部の拍動性腫瘤を認め当科を受診した.CTで人工血管左脚末梢だけでなく,右脚末梢にも瘤を認めたため当科入院し,両側の人工血管断裂による動脈瘤を疑い手術を施行した.左側の瘤を切開すると人工血管断裂や吻合部の破綻はなく,病理検査でも動脈硬化性の真性瘤であった.古い人工血管左脚末梢と総大腿動脈の間を10 mmのexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)グラフトで置換した.右側の瘤を切開すると遠位吻合部は問題なく,その近位約1 cmの部位から長軸方向に1.5 cmにわたり人工血管が断裂して仮性動脈瘤を形成していた.人工血管断裂による非吻合部仮性動脈瘤と診断した.破綻部は左と同様10 mm ePTFEグラフトで置換し手術を終了した.術後の経過が長く,可動性の高い鼠径部に人工血管が存在する場合は,人工血管断裂による仮性動脈瘤の形成に留意する必要がある.

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