日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
急性心筋梗塞後の僧帽弁後乳頭筋部分断裂に対し僧帽弁形成術を施行した1治験例
中根 武一郎武田 崇秀金光 尚樹青田 正樹小西 裕
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2009 年 38 巻 6 号 p. 380-384

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抄録

乳頭筋断裂は稀ではあるが重篤な急性心筋梗塞後の合併症である.今回われわれは急性心筋梗塞後の後乳頭筋部分断裂に対し僧帽弁形成術,冠動脈バイパス術を施行し良好な成績を得たので報告する.症例は85歳の男性で,急性心筋梗塞によるショックの診断で緊急入院した.緊急心臓カテーテル検査の結果,冠動脈3枝病変であり,責任病変の左回旋枝に経皮的冠動脈形成術を施行し再灌流を果たした.入院11日後に突然肺動脈圧が60台に上昇し収縮期雑音を聴取した.経食道心エコー検査にて僧帽弁前尖のA2からA3の逸脱と重度僧帽弁逆流を認めた.弁下に筋肉と思われる可動性のmassを認め後乳頭筋のanterior headの断裂と診断した.大動脈内バルーンパンピング(IABP)を挿入し血行動態は安定し,4日後(入院15日後)に手術を施行した.後乳頭筋anterior headが断裂しており,健常なposterior headに再縫着しCarpentier Edwards classical ring M28人工弁輪で弁輪形成し逆流を制御した.また左内胸動脈にて左前下行枝にバイパスした.術後の心エコー検査にて僧帽弁逆流を認めず,術後43日目に独歩退院した.

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